仕事に慣れてきた社会人3年目。自分のタスクは自分で終わらせられるようになった一方で、後輩の指導や小さなプロジェクトを任されると、これまでの実務力とは違う種類の力が必要だと気づく瞬間があります。人を巻き込み、同じ成果を仕組みで再現する力、組織を創る力と仕組みを創る力です。この2つは、経験と言葉にする作業を重ねることで、今日から鍛え始められます。
今の自分をセルフチェックする
次の5つの質問を、心の中で「はい」か「まだ」で考えてみてください。開くと、それぞれが仕組みと組織のどちらの力につながっているかが分かります。
自分が抜けたら止まる作業が、今の仕事にありますか?
「はい」なら、その作業はまだ言葉になっていない可能性があります。目的、始めるきっかけ、進める順番、終わりの状態の4つを書き出すところが、仕組みを創る力の入口です。
同じ種類の判断を、先週と今週で違う基準でしていませんか?
判断基準が毎回変わると、仲間はいつも確認を取りに来ることになります。基準を一度言葉にして共有すると、任せられる範囲が広がります。
自分の役割を、肩書きではなく成果物で説明できますか?
「担当している」ではなく「何を完成させて、誰に渡しているか」で語れると、組織の中での自分の位置が明確になります。組織を創る力は、自分の役割を言葉にするところから始まります。
後輩や仲間に、自分の判断理由まで渡せていますか?
結果だけでなく、なぜその判断をしたかまで共有すると、相手は次に自分で考えて動けるようになります。これが、仲間が自走する組織への一歩です。
今週、仕組みか役割分担のどちらかを、一つだけ言葉にしましたか?
量よりも、続けることに価値があります。今週まだなら、この記事を読み終えたあとに一つだけ選んで書き出してみてください。
なぜ社会人3年目に「組織を創る力」と「仕組みを創る力」が問われるのか
入社1〜2年目は、任された仕事を期日内に仕上げる実務力が評価の中心です。3年目に近づくと、後輩ができ、小さなチームやプロジェクトを任される機会が増えます。ここで問われ始めるのが、自分一人の成果ではなく、仲間を含めた成果を出す力です。
実務力と、組織を創る力・仕組みを創る力は、積み上がる方向が違います。実務力は「自分がどれだけ早く正確に終わらせるか」で伸びます。組織を創る力と仕組みを創る力は、「自分がいなくても、同じ質の成果が生まれる状態をどれだけ増やせるか」で伸びます。
この転換は、意識して取り組むほど早く進みます。役職が変わるのを待つ必要はありません。今の仕事の中に、練習できる場面はすでにあります。
力の中身を分解する
組織を創る力と仕組みを創る力は、似ているようで鍛え方が違います。ここでは2つに分けて、それぞれの実践を具体的にします。
仕組みを創る力:同じ対応の二度目を、誰でも再現できる形に変える
仕組みを創る力の入口は、繰り返す作業の二度目に、一つだけ言葉を残すことです。
- 何のために行うか(目的)
- 何をきっかけに始めるか(開始条件)
- どの順番で進めるか(手順)
- どの状態になったら終わりか(完了条件)
この4つが言葉になると、仕事は自分の調子に左右されにくくなり、誰かに渡せる形に近づきます。会議の準備、案内文の送付、資料づくりなど、身近な作業から一つ選ぶところから始められます。
仕組みは、人を管理するための道具ではありません。目的は、次の行動が自然に生まれる状態をつくることです。使う人が迷う場所を減らせているかで、仕組みが機能しているかを判断します。
組織を創る力:判断基準を渡し、仲間が自分で動ける状態をつくる
組織を創る力の入口は、権限そのものではなく、判断基準を渡すことです。
「これをやっておいて」だけでは、相手は何を優先し、どこまで自分で決めてよいかが分かりません。「目的はこれ、この範囲は任せる、迷ったらここに戻ってきて」まで伝えると、相手は自分の判断で動けるようになります。
小さな成功を仲間と一緒に確認する時間も欠かせません。達成の実感を早いタイミングで共有すると、次の行動につながりやすくなります。振り返りは反省会にせず、うまくいった判断を一緒に見つける時間にします。
役割は、肩書きではなく「何を完成させて、誰に渡すか」で決めます。渡す相手が見えると、一人の仕事がチームの成果へつながっていきます。
一次体験:テックリードから起業まで、仕組みと組織を創り続けてきた現在地
僕は2021年、新卒でサイバーエージェントに入社しました。ABEMA LiveのiOSアプリ開発を担当しながらテックリードを経験し、チームの成果を一人の頑張りに頼らない状態にする手応えと、乗り越える工夫の両方を、この時期に一次情報として学びました。
25歳でフリーランスへ転向し、直請けとエージェント経由の複数の現場で開発に携わりました。26歳で株式会社Coeliaを設立し、今はイベント運営、開発、発信を仲間とチームで進めています。
Coeliaのイベント運営では、初参加の人が自然に話せるよう「はじめましてカード」や「話題サイコロ」といった仕組みを取り入れています。これは、進行役の技量に頼らず、誰が運営しても同じ安心感を再現するための工夫です。参加した人が次第に自分から場を動かす側に回っていく様子を見るたびに、仕組みと組織は人が自分で動ける状態をつくるためにあるのだと実感します。
この現在地は完成形ではありません。恵比寿での店舗づくりも今まさに進行中で、仕組みと組織を創る力は、今も日々の実践の中で育て続けています。
今日からできる3つの実践ステップ
- 繰り返す作業を一つ選び、目的・開始条件・手順・完了条件を書き出す
- 今任せている、または任されたい役割を、成果物と渡す相手で言い直す
- 今週の判断を一つ、仲間や後輩と一緒に振り返り、基準を言葉にする
3つとも、特別な役職や環境を必要としません。今の仕事の中で、今日から始められます。
よくある質問
組織を創る力は、マネージャーにならないと鍛えられませんか?
役職がなくても鍛えられます。小さなプロジェクトで役割を分担し、判断基準を共有する場面から練習を始められます。
仕組み化と自動化は同じですか?
別のものです。仕組み化は、目的・開始条件・手順・完了条件を言葉にすることが先で、自動化はその中で機械に任せられる部分を後から選ぶ手段です。
一人で仕事をしている時期でも、この力は必要ですか?
必要です。将来チームで動くときに再現できる形で、今の判断や手順を残しておくと、仲間ができたときにすぐ渡せます。
社会人3年目で、まだ実務に自信が持てなくても意識していいですか?
意識してよい段階です。実務力と、組織を創る力・仕組みを創る力は並行して育てられます。今日できる小さな一つから始めれば十分です。