Slack Codeとは、AIエージェントへの指示と、返ってきたコードの変更点を、Slackの専用チャンネルへ流しながら開発を進める仕組みです。2026年8月20日に発表されました。新しいAIモデルが出たわけではありません。Slack Codeが変えたのは、AIの賢さではありません。AIとのやりとりを、何人が読めるかです。
僕は自社のサービスを、AIを前提にチームで設計・開発・運用しています。読んだ一次情報は3本で、Slack Developer Docsのchangelog、Slackヘルプセンターの使い方ページ、Slack公式ブログです。いずれも英語で、以下に書く仕様は3本のどれかに載っています。
コードチャンネルの作り方と、終わり方
対応しているAIエージェントをメンションして何かを頼むと、エージェントが専用のチャンネルを作ります。デスクトップの「エージェントとツール」タブから自分で作ることもできます。あとはチャンネルの中に、成果物が順番に置かれていきます。
出てくる用語を先に開きます。差分は、変更の前と後で何行がどう変わったかを並べた一覧のこと。CanvasはSlackの中で書ける文書で、計画やメモを書く場面で使われます。HTMLプレビューは、作ったものが実際に動いている画面です。HTMLプレビューが、コードを書かない人にいちばん効きます。
| 場面 | 何が起きるか | 出典 |
|---|---|---|
| 始まり | 対応エージェントをメンションすると専用チャンネルができる。デスクトップの「エージェントとツール」タブから自分で作ることもできる | ヘルプ |
| チャンネルに出るもの | コードの差分、Canvas、動くHTMLのプレビュー、ファイル、Block Kitのビュー(Slackの中で操作できる画面) | ヘルプ・changelog |
| エージェントの状態 | Working / Idle / Needs attention / Done / Inactive / Archived の6つが見える | ヘルプ |
| 止めたいとき | 状態バッジから「Stop(エージェント名)」を押して応答を止める。押せる人の範囲は明記が無い | ヘルプ |
| 大きな変更 | チャンネルの中で人の承認へ回せる(回すかどうかは選べる書き方で、既定でオンとは書かれていない) | 公式ブログ |
| 終わり(作業が済んだとき) | 自動でアーカイブされる。アーカイブ後は閲覧と検索ができ、新しい投稿だけができなくなる | 公式ブログ・ヘルプ |
| 終わり(放置したとき) | 自分で閉じることもできるし、7日間なにも動きが無ければサイドバーの一覧から外れる(表示から外れる話で、消えるとは書かれていない) | ヘルプ |
コードチャンネルを作れると案内されているエージェントは4つです。Claude(Anthropic)、Devin(Cognition)、GitHub Copilot、Vercel。ChatGPT(OpenAI)は「近日」と公式ブログに書かれています。料金の面では、対応エージェントを入れていれば全プランで使えるとヘルプにあります。順次提供中なので、開いてもまだ出てこないワークスペースがあります。
管理の面では、公式ブログが既存の権限と管理設定をそのまま引き継ぐので、IT側が新しく設定・監査するものは無いと書いています。裏を返すと、差分を読める人の範囲は、チャンネルを公開にするか非公開にするかで決まります。通常のSlackチャンネルと同じ考え方です。
これまでのAI開発は、頼んだ本人しか読めませんでした
AIにコードを書かせる道具は、もう珍しくありません。ただ、どれも基本は1対1でした。自分のエディタか、自分のターミナルか、自分のブラウザのタブ。頼むのも自分、返ってきたものを読むのも自分、良し悪しを決めるのも自分です。

1対1のやりとりだと、途中を読めるのは本人だけです。チームに渡るのは、できあがった成果物だけになります。何を試して、何をやめて、どこで迷ったのか。頼んだ本人しか持っていない状態になります。
僕たちのチームでも、同じところで時間が溶けていました。AIに任せた分だけ速くなるはずが、あとから「なんでこうなってるんだっけ」をたどり直す時間が増える。曖昧さを減らすと結果的に早く進む、というのが僕の仕事のやり方なのですが、1対1のやりとりは曖昧さを個人の中に溜め込みます。速くなった分が戻ってきていた感覚がありました。戻ってきていた時間は測っていません。
読める人は増えます。止められる人が増えるかは別です
チャンネルへ流せば、読める人は確実に増えます。ただ読めることと、止める権限があることは違います。新社会人1年目が先輩の作業に「待ってください」と言えるかどうかは、Slack Codeの外側の話です。
| 見る観点 | 1対1で進める(筆者の対比) | コードチャンネルで進める(一次情報) |
|---|---|---|
| 途中を読める人 | 依頼した本人だけ | チャンネルに入っている人 |
| 気づけるタイミング | できあがってから | 差分やプレビューが出た時点 |
| 止める手段 | 本人が気づいて止める | 状態バッジからの停止と、人の承認へ回す導線 |
| あとから辿れるもの | 成果物と、本人の記憶 | アーカイブ後も閲覧・検索できるチャンネル |
左の列を右の列に近づけるだけなら、実は新機能は要りません。画面を共有すればいい、報告を細かくすればいい、で済みます。ただ、どちらも人の努力でやる方法で、忙しい週にいちばん先に落ちます。やりとりの流し先をチャンネルへ変えると、読める状態のほうが既定になります。ただし読めることは、読まれることを保証しません。
エンジニアでない人にも、入り口があります
コードチャンネルに出るのは差分だけではありません。計画をまとめたCanvasと、動くHTMLのプレビューが並びます。

動いている画面を見て「押す場所が分かりにくいです」と言うのに、コードを読む力は必要ありません。計画のメモを読んで「順番を変えて、先にお客さんへ聞いたほうがよさそうです」と言うのも同じ。関われる入り口が、チャンネルの中に増えます。
かわりに、誰をチャンネルへ入れるかを決める話が増えます。差分を読める人の範囲は公開・非公開の設定そのものなので、外部の人が入っているチャンネルでは何を流すかを先に決めることになります。仕組みは決めてくれません。
もう1つ、混ぜてはいけない話があります。停止ボタンで止まるのはSlack上のエージェントの応答で、本番へ反映する権限を持っているのはエージェント側です。Slackに停止ボタンがあることと、本番が守られていることは別に確かめる必要があります。
今日できる1動作
Slack Codeが自分のワークスペースに来ていなくても、今日できることがあります。所要はどちらも5分ほどです。
職場でAIを使っている人が近くにいるなら、AIとどうやりとりしたかを何人が読めるかを数えてください。答えが1人なら、Slack Codeが埋めようとしている差が自分の職場にもあります。近くにいない、あるいは聞ける空気ではないなら、自分がAIに聞いたことを1件だけ、チームのチャンネルへ「こう聞いて、こう返ってきた」と3行で流してみる。読める人を1人から数人へ増やす習慣は、道具が来る前に作れます。詰まったら、下のLINEで聞いてください。
1人で作り始めるところから知りたい人はAIを使った個人開発の始め方、業務のフローへAIを入れる手順は生成AIの業務フローの作り方にあります。若手が職場でAIを使って改善を回す話は若手社員のAI業務改善、AIへどこまで任せるかを疑う話はAIと権力の集中について読んだ記事に書きました。
Slack Codeが変えたのは、AIの賢さではありません。AIとのやりとりを、何人が読めるかです。読める人が増えれば、口を挟める人の顔ぶれも変わります。では自分の職場では、いま誰が読めていないのでしょうか。
よくある質問
Slack Codeは新しいAIモデルですか?
Slack Codeは新しいAIモデルではありません。すでにあるAIエージェントとのやりとりを、Slackの専用チャンネルへ流す仕組みです。コードチャンネルを作れると案内されているのはClaude(Anthropic)、Devin(Cognition)、GitHub Copilot、Vercelの4つで、ChatGPT(OpenAI)は近日と公式ブログにあります。賢さを足す機能ではなく、やりとりを読める人を増やす機能です。
Slack Codeを使うのにお金はかかりますか?
エージェント側の費用はかかります。コードチャンネル自体は、対応エージェントを入れていれば全プランで使えるとヘルプに書かれていますが、エージェントの契約に何が必要かは明記がありません。金額の目安は記事では出せません。順次提供中なので、まだ出ていないワークスペースもあります。
コードチャンネルはどうやって作りますか?
対応エージェントをメンションして依頼すると、エージェントがチャンネルを作ります。デスクトップの「エージェントとツール」タブから自分で作ることもできます。作業が済むと自動でアーカイブされ、アーカイブ後は閲覧と検索ができて新しい投稿だけができなくなります。動きが無いまま7日たつと、サイドバーの一覧から外れます。
エンジニアでなくても関係ありますか?
Slack Codeのコードチャンネルは、エンジニアでない人にも関係します。差分だけでなく、計画のCanvasやHTMLプレビューが並ぶためです。動いている画面を見て「分かりにくい」と言うのに、コードを読む力は要りません。ただし読めることと、変更を止める権限があることは別です。
勝手に本番へ反映されてしまう心配はありませんか?
Slackの停止ボタンで止まるのは、Slack上のエージェントの応答です。本番へ反映する権限を持っているのはエージェント側なので、別に確かめる必要があります。公式ブログには、大きな変更をチャンネルの中で人の承認へ回せると書かれていますが、既定でオンとは書かれていません。何を大きな変更とみなすかを決めるのも人の側です。
差分は誰にでも読まれてしまいますか?
コードチャンネルは通常のチャンネルと同じ信頼の土台と、公開・非公開の設定を持ちます。公式ブログには、既存の権限と管理設定をそのまま引き継ぐので、IT側が新しく設定・監査するものは無いと書かれています。つまり読める人の範囲は、チャンネルを公開にするか非公開にするかで決まります。