2021年の春、石川県から東京へ出てきました。新卒入社と同時の引っ越しで、荷ほどきが終わらないうちに研修が始まったのを覚えています。同期には恵まれました。飲みに行けば楽しいし、困ったときに聞ける相手もいる。上京してすぐの自分にとって、それで十分すぎるくらいでした。
その僕が、会社の外の人と会いはじめたのは3年目です。気持ちだけは1年目からあったのに、2年かかりました。この記事は、その2年で何が起きていたのかと、いま1年目の人が同じ2年を空けずに済む始め方の話です。

会社の中に、答えが全部そろっていた
他業界の人とも話してみたい。その気持ち自体は、上京してわりとすぐに育っていました。東京にはいろんな仕事をしている人がいるらしい、という実感が先にあったからだと思います。
それでも動きませんでした。動けなかった、というより、動く必要を感じていなかったんだと思います。目の前には評価があり、目標があり、次に何を覚えればいいかの順番まで用意されていました。迷っても、社内に聞ける先輩がいる。キャリアを考える材料が、全部会社の中にそろっていたんです。
そろっていると、外に出る理由が立ちません。それに、いま行ったところで何を話せばいいんだろう、とも思っていました。実績もないし、名乗れる専門もない。何か持てるようになったら、そのとき行けばいい。
いま振り返ると、この理由がいちばんたちが悪かったです。まじめに働いているほど、正しく聞こえてしまうから。サボっているわけでも、逃げているわけでもない。ちゃんと目の前をやったうえでの判断に見えるので、自分でも疑うきっかけがありません。そうやって2年が過ぎました。
「こんな仕事があるんだ」で、順番が入れ替わった
3年目になって、仕事にも東京の暮らしにも慣れた頃、せっかく東京に来たならいろいろな人と会って視野を広げたい、と思って動き出しました。動機はその程度です。何かを解決しに行ったわけではありません。
会って最初に来たのは、「こんな仕事があるんだ」という感想でした。知らない働き方、知らない価値観。難しい話ではなく、ただ知らなかっただけのことが、次から次に出てきました。
正直、ちょっと悔しかったです。2年かけて積んできたつもりだったのに、いちばん効いたのは積み上げた何かではなく、知らなかったことを知ったという、それだけのことだったので。
同時に、力が抜けました。足りなかったのは実績ではなく知っている選択肢の数だった。持ってから会いに行こうとしていたけれど、何を持つべきかは会ってみないと分からないんだから、順番が逆だったんです。僕がいま座右の銘にしている「知らないと始まらない、知ろうとしなければ始まらない」は、このときに手に入れた順番のことです。
視野が広がると思っていたら、キャリアを決める場所が変わった
そこから続けたのは3つだけです。人と会う。本を読む。本当に求めていることを書き出す。この3つで、人生の目的と目標がはっきりしていきました。
面白いのは、手に入ったものが最初の目的と違ったことです。視野を広げるつもりで会いに行ったのに、実際に変わったのはキャリアを決める場所でした。会社の目標に応えることに加えて、会社という環境を活かしながら、自分が頑張る理由を軸に設計するようになった。判断の中心が、会社の中から自分の側へ移ったんです。
だから2年を無駄だったとは思っていません。会社の中で必死にやった時間があるから、外の話を自分ごととして聞けた面もあります。ただ、あの2年は空けなくてもよかったとは思います。外で聞いた話のほとんどは、実績を持っていない1年目でもそのまま受け取れる内容でした。いま20代と1:1で話したり、Coeliaでリアルに会う場をつくったりしているのは、ここでの実感がそのまま続いているからです。
同じことを、いまの新入社員の87.1%が思っている
これが僕だけの話なら、ただの昔話です。ところが数字を見ると、そうではありませんでした。東京商工会議所の「2026年度 新入社員意識調査」は、2026年4月1日〜7日に同会議所の新入社員研修を受けた858名が回答したものです。
- 何らかの業務外コミュニケーションを求める:87.1%
- 仲の良い同僚などとのランチ:48.6%
- オフィシャルな懇親会・飲み会:42.4%
- 仲の良い同僚などとの飲み会:37.6%
9割近くが、仕事の外でも話したいと思っています。そう思うこと自体は、特別でも甘えでもありません。そして最も多い形は、飲み会ではなくランチでした。夜の予定を空ける体力も、場を仕切る力も要らない形が、いちばん選ばれています。
つまり、外に出るために必要だと思い込んでいたもの(実績・体力・場をつくる力)は、多数派が選んでいる形にひとつも入っていません。用意ができていないから出られないのではなく、用意が要らない形を選んでいなかっただけです。
断っておくと、この調査は研修を受けた新入社員が対象で、全国のすべての新入社員を代表する数字ではありません。それでも、思っているのが自分だけではないことの裏づけには十分です。
明日のランチから始める4ステップ
- 社内で、週1回のランチ相手を1人決める
同期でも、隣の部署の先輩でもかまいません。48.6%が選んでいる形をそのまま真似します。話題を用意する必要はなく、「どんな仕事をしているか」を聞くだけで、自分の職場の見え方が変わります。 - 社外で、話を聞ける相手を1人つくる
大学の同期、前職の知り合い、社外のイベントで会った人など、利害関係のない相手を1人持ちます。社内だけだと、判断の材料が自分の会社の常識に寄ります。1人いるだけで比較ができます。 - 聞くことを1つだけ決めて話す
「今の会社で1年目にやっておいてよかったことは何ですか」のように、質問を1つだけ持っていきます。答えが返ってきたら、今週試せる形まで具体にして持ち帰ります。 - 話した内容と、試したことを書き残す
誰と、何を話し、何を試したかを1行ずつ残します。3か月分たまると、自分がどの話に反応しているかが見え、次に会いたい相手を選べるようになります。書き出すことは、僕の3つのうちの1つでもあります。
続かないときに見直すこと
- 頻度を上げすぎている:週1回のランチと、月1回の社外の予定で十分に回ります。最初から週3回にすると、仕事の波が来た週に止まります。
- 「役に立つ人」を探している:目的を先に絞ると相手が見つからなくなります。1年目は、話していて面白い相手を優先して問題ありません。
- 持ち帰りを決めていない:楽しかっただけで終わる回が続くと、忙しい週に真っ先に削られます。1つだけ試すことを決めて帰ります。
- 就業規則を確かめていない:社外の活動が報酬を伴う場合は、勤務先の就業規則と契約を先に確認してください。
目的に合う次のページ
- 上京会社員の社外活動の探し方を読む:社外で会う場そのものを探したい方へ
- 人脈を「育てるつながり」として捉え直す:社外の接点づくりに打算っぽさを感じる方へ
- 社会人3年目に視野を広げる4ステップを読む:1年目の先に何が続くかを知りたい方へ
よくある質問
社会人1年目から業務外で人と話す時間を作る必要はありますか?
東京商工会議所の2026年度新入社員意識調査(回答858名)では、87.1%が何らかの業務外コミュニケーションを求めていました。求める気持ちを持つこと自体は多数派です。まずは仲の良い同僚とのランチのように、短く終わる形から始めます。
実績が無いうちに社外の人と会っても意味がありますか?
他社の同世代の仕事の任され方、自分の職場の常識がどこまで一般的か、何を学ぶと選択肢が増えるかは、実績が無くても聞ける話です。僕自身は社会人3年目まで動かず、あとから1年目でも受け取れる話が多かったと感じました。
飲み会が苦手でも業務外のつながりは作れますか?
作れます。同じ調査で最も多かった形はランチ(48.6%)で、飲み会(オフィシャル42.4%・仲の良い同僚37.6%)より上でした。昼の30分や帰り道の会話でも、聞くことを1つ決めておけば十分に成立します。
忙しくて続かないときはどうすればよいですか?
頻度を週1回のランチと月1回の社外の予定まで下げ、1回ごとに「今週試すこと」を1つだけ決めます。持ち帰りが無い回が続くと、忙しい週に最初に削られます。