みなし残業(固定残業代)とは、あらかじめ決めた時間分の残業代を、実際の残業時間にかかわらず毎月定額で払う仕組みです! 求人票の「月給25万円(みなし残業20時間分を含む)」の後半がこれにあたります。よく聞かれるのは「これって損なんですか?」ですが、損か得かは制度の名前では決まりません。決まるのは3つの数字です。この記事では、その3つ(時間・内訳・超過分)が何で、どこで確認するかまで渡します。
みなし残業とは、残業代を先に定額で決めておく仕組みです
みなし残業とは、一定時間分の残業代をあらかじめ給与に組み込み、実際の残業時間にかかわらず毎月同じ額を払う仕組みのことです! 求人票では「固定残業代」「定額残業代」「営業手当(◯時間分の時間外手当を含む)」など、呼び方が会社によって変わります! この記事では以後「みなし残業」で統一します。
まず、通常の残業代と並べてみます。ここを分けておくと、後の話が全部つながります。
| 観点 | 通常の残業代 | みなし残業(固定残業代) |
|---|---|---|
| 先に決まっているもの | 単価だけ | 時間と金額 |
| 残業がゼロだった月 | 残業代は付かない | 決めた額が支払われる形が一般的 |
| 想定を超えて働いた月 | 実績どおり計算される | 超えた分が別に支払われるか |
| 読み手が最初に見る場所 | 給与明細の残業代欄 | 求人票と労働条件通知書のカッコ書き |
表を横に読むと、みなし残業の性格が1行で言えます。通常の残業代が「後から実績で決まる」のに対して、みなし残業は「先に時間と金額を決めておく」。決める順番が違うだけで、割増賃金(残業したときに上乗せされる分)という土台の話が消えるわけではありません。
その土台は公的なルールです。労働基準法(e-Gov法令検索)は時間外労働などに割増賃金を支払うことを定めていて、厚生労働省の労働時間・休日のページに制度の全体像がまとまっています。そのうえで手元の話に戻すと、含まれる時間・金額・超えた分の扱いは、手元の書類で確認できる項目です。読み取れないときは、そのまま聞いて大丈夫な項目です。ここが、次の3つの数字につながります!
なお、求人票に「裁量労働制」と書かれている場合は別の制度です。働いた時間をどう数えるかの枠組みで、みなし残業とは論点が変わります! 両方の言葉が並んでいることもあるので、混ぜずに読んでください。
「損ですか」に、制度の名前では答えられません
みなし残業が損か得かは、制度の名前ではなく3つの数字で決まります。 だから「みなし残業ありの会社はやめたほうがいい」とも「気にしなくていい」とも、この記事では書きません。
理由は単純です! 同じ「月給25万円」でも、みなし残業が何時間分入っているかで、基本給の位置がまるごと変わるからです。みなし残業20時間分を含む25万円と、みなし残業なしの25万円は、額面が同じでも中身が別物になります。額面だけを並べて比べると、違うものを同じ土俵に載せてしまうんです。
ここが、この記事のいちばん大事な一文につながります。比べられるのは「月給」ではなく「内訳」です。 内訳が分からないうちは、比較そのものが成立していません。
では、内訳として何を取ればいいのか。3つに絞ります。
- ①時間:何時間分の残業代が含まれているか(例:20時間分)
- ②内訳:そのうち固定残業代がいくらで、基本給がいくらか
- ③超過分:決めた時間を超えて働いた月は、別途支払われるか
①が要るのは、その時間が自分の働き方とかみ合うかを見るためです! 毎月ほぼ定時で帰る職場なら、みなし残業は実質的に上乗せとして働きます。逆に想定時間を毎月超えるなら、②と③がそのまま生活に効いてきます。
②が要るのは、同じ月給でも、基本給の位置が違うと比較の土台が変わるからです。超えた分がどう支払われるかは、就業規則・賃金規程の該当箇所と、厚生労働省の公的ページで確認できます! だから「月給が高いほうを選ぶ」ではなく「基本給がいくらのほうを選ぶか」で見え方が変わることがあるわけです。
③が要るのは、ここが一番あとで効くからです! 決めた時間を超えた月にどう扱われるのかも、契約と就業規則を開けば書いてあります。書いていない、読んでも分からない、というときは推測で埋めずに聞くのが速いです。
3つの数字は、この4か所のどこかに書いてあります
3つの数字は探しにいく場所が決まっています。 検索して一般的な相場を集めるより、手元の4か所を開くほうが早く終わります。
| 見る場所 | 主にこの段階の人 | 分かること | 読めないときに聞く相手 |
|---|---|---|---|
| 求人票・募集要項 | これから応募する | ①時間 ②内訳のおおよそ ③超過分のカッコ書き | 応募先の採用担当 |
| 労働条件通知書・雇用契約書 | 内定〜入社直後 | ①②③すべて(自分の契約そのもの) | 人事 |
| 給与明細 | もう働いている | ②内訳(手当名で分かれている) ③超過分が別行で出ているか | 人事・給与担当 |
| 就業規則・賃金規程 | もう働いている | ①③の決まりごとと計算の考え方 | 人事 |
すでに入社している新社会人なら、たぶん3行目と4行目です。この表で言いたいのは、段階によって取れる数字が違うということ。応募前の人が給与明細を見ることはできませんし、すでに働いている人にとっては求人票より契約書と明細のほうが正確です。自分がいまどの行にいるかを決めてから、そこだけ開いてください。
書類が手元に見つからないときは、メールを「雇用契約」「労働条件」で検索してみてください。それでも出てこなければ、人事へ控えがあるかを聞けば済みます。
開いたら、この1枚に書き写します! 保存しておくと、次に転職を考えたときそのまま使えます!
| 書き写す項目 | いまの会社(または応募先A) | 比べる相手(応募先B) |
|---|---|---|
| ①時間(何時間分か) | 時間分 | 時間分 |
| ②内訳・固定残業代 | 円 | 円 |
| ②内訳・基本給 | 円 | 円 |
| ③超過分は別途支払われるか | あり/なし/記載なし | あり/なし/記載なし |
| 書き写した場所 | 求人票/契約書/明細/就業規則 | 求人票/契約書/明細/就業規則 |
このシートのポイントは、「記載なし」という選択肢を最初から用意しておくことです。空欄のままにすると調べ直しが続きますが、「記載なし」と書けた瞬間に、それが人事へ聞く1問へ変わります!
聞くときは、そのまま送れる形にしておくと早いです。僕が使うならこの3行にします。
お忙しいところ失礼します。給与の内訳について3点だけ教えてください。
①固定残業手当は何時間分でしょうか。
②基本給はいくらになりますか。
③その時間を超えた月は、別に支給されますか。
この3問はどれも会社が答えを持っている質問なので、自分で悩んでも答えは出ません。全部を聞くのではなく空欄になったところだけを聞くと、会話が1回で終わります。早く聞くほど、後の予定が立ちます!
そして、読んでも判断がつかないとき、契約の内容そのものが論点になるときは、社内の相談窓口(無い会社もあります)や、厚生労働省の総合労働相談コーナー(全国の都道府県労働局・労働基準監督署内などにある無料の相談窓口)、専門家へ相談してください。ここは僕の役割ではなく、公式情報と専門家の役割です。
頼れる先が決まっていると、ここから先は迷わず進めます。
3つの数字が手元にあると、判断が自分の側に戻ります
3つの数字が変えるのは会社の制度ではなく、自分が持っている材料の量です。 ここは正直に書きます。僕たちが確認しても、会社の給与制度そのものは変わりません。
それでも確認する価値があるのは、材料を持っている人と持っていない人で、次にできることが変わるからです! 時間の流れで並べてみます。
| 場面 | 3つの数字を持たない場合 | 3つの数字を持っている場合 |
|---|---|---|
| 2社で迷っている | 月給の額面だけで比べ、決め手が出ない | 基本給と含まれる時間で並べ、どちらが自分の働き方に合うかで選べる |
| 入社直後 | 明細の手当名の意味が分からず、そのまま流す | 明細と契約書が一致しているかを最初の月に確かめられる |
| 残業が想定時間を超えた月 | 「こういうものかな」で終わる | 超過分の扱いを契約のどこで確認するか分かっている |
| 相談したいとき | 「なんとなく損なのかな」から話が始まる | 数字を持って窓口や専門家に相談でき、話が1回で進む |
右側が優秀という話ではありません。同じ時間と同じ会社でも、判断の材料が手元にあるかどうかだけが違います。 左側は情報を集める時間が続き、右側は書き写す時間で終わる。かかる時間はむしろ右側のほうが短いんです。
これは僕の仕事のやり方の土台にもなっている考え方です! 開発でもコミュニティ運営でも、判断の軸は同じところに置いています。曖昧さを減らすことで、結果的に早く進む。決めていない項目・読んでいない項目は消えてなくならず、あとで判断のコストとして戻ってくるからです。
僕は石川県から2021年に新卒で上京しました。その後フリーランスへ移り、いまは自分で会社をやっています。ただしこれは僕ひとりの経路で、給与制度の中身は会社ごとに違います。だからこの記事で確定させるのは制度の良し悪しではなく、「自分の契約書を開く」という手順のほうです。
この一手が効かない場面も書いておきます
万能ではないので、限定を明記します。
- この記事の位置づけ:この記事は制度の一般的な説明で、個別の契約についての法的な判断ではありません
- 適法かどうかが論点になっているとき:未払いの疑いや契約内容そのものが論点なら、数字を並べる話ではなくなります。社内の相談窓口、厚生労働省の総合労働相談コーナー、専門家へ
- 求人票に内訳が書かれていないとき:珍しいことではありません。その場合は面接で聞くか、労働条件通知書を受け取る段階で確認すれば足ります! 応募の段階で分からないこと自体は、その会社のマイナス材料ではありません。
- 裁量労働制・管理監督者などの枠組みで働いているとき:みなし残業とは別の制度なので、確認する条文も窓口も変わります! 自分がどの枠組みなのかを先に人事へ確認してください
- もう体調に出ているとき:制度の理解より、休むことと相談することが先です。立て直し方はレジリエンスとはにも書きました。
逆に、この一手がいちばん効くのはいま2社で迷っている人と、入社して最初の給与明細を受け取ったばかりの人です! どちらも、数字を書き写すだけで比較が成立します。家賃など生活側の逆算とセットで見たい人は手取り20万円の家賃目安と逆算3ステップを土台にしてもらえたらうれしいです。人事へ確認を通す型そのものは内示とはにも書いたので、あわせてどうぞ。
よくある質問
みなし残業と固定残業代は違うものですか?
同じ仕組みを指す呼び方の違いとして使われることが多いです! 求人票では「固定残業代」「定額残業代」「みなし残業手当」など会社ごとに表記が変わります! 名前が違っても確認することは同じで、何時間分か・内訳はいくらか・超えた分はどうなるかの3つです。
みなし残業があると損なんですか?
制度の名前だけでは決まりません。同じ月給でも、含まれる時間と基本給の位置で中身が変わるからです。比べるのは月給ではなく内訳で、3つの数字がそろって初めて比較が成立します。数字を取る前に損得の結論を出さないほうが、あとで後悔が少ないです。
みなし残業は何時間まで設定できますか?
ここは一般論の数字で答えません。時間外労働そのものに上限のルールがあり、みなし残業として何時間分を組み込めるかは、その上限や個別の事情とあわせて判断される領域だからです。ネットで見かける「◯時間まで」を自分の会社の答えとして受け取らないほうが安全です。制度の枠組みは厚生労働省の労働時間・休日で確認し、自分のケースの当てはめは総合労働相談コーナーや専門家へ相談してください。
決めた時間より残業が少ない月は、減らされますか?
みなし残業は、実際の残業時間にかかわらず定額で支払われる形が一般的です! 自分のケースの扱いは、労働条件通知書と就業規則(賃金規程)、それに厚生労働省の公的ページで確認できます。書いていない、読んでも分からない、というときは人事へ聞くのが確実です。
決めた時間を超えて働いた分は、どうなりますか?
ここが3つ目の数字です。超えた分がどう支払われるかは、契約と就業規則の該当箇所、それに厚生労働省の公的ページで確認できます。読んでも分からない、明らかにおかしいと感じる、というときは厚生労働省の総合労働相談コーナーや専門家へ相談するのが確実です。
面接で「みなし残業は何時間分ですか」と聞いても大丈夫ですか?
大丈夫です! 労働条件の確認は入社前にすり合わせておく話なので、聞くこと自体はふつうの手続きです。言い方を柔らかくしたいときは「働き方のイメージを持ちたいので、固定残業手当の時間数と、超えた場合の扱いを教えてください」で十分に伝わります。入ってから知るより、入る前に知るほうがお互いに気持ちよく始められます。