プロンプトとは、AIへ渡す指示文のことです! 「要約して」の一言もプロンプトですし、目的・前提・条件・出力の形まで書いたひとかたまりの文章もプロンプトです。そして、使い始めるとすぐこれにぶつかります。同じAIなのに、自分が使うとぱっとしない。この記事が扱うのはそこです! 結論を先に置くと、実務で試した範囲では、差がつくのは言い回しのうまさではなく渡した材料と、どこまで細かく渡したかでした。うまい言い方を探す時間を材料を書き出す時間に置き換えると、テンプレを覚えなくても結果が安定します。
プロンプトとは、AIへ渡すもの全部のことです
プロンプトとは、AIに何をしてほしいかを伝えるために渡す入力のかたまりです! 日本語では「指示文」と訳されることが多いですが、実際に渡しているのは指示だけではありません。
入っているのは4種類あります。①目的(何のために・誰に向けたものか)②前提(AIが知らないこちらの状況や手元の材料)③制約(条件・やってほしくないこと・分量)④出力の形(どんな形式で返してほしいか)。この記事では、この4つをまとめて材料と呼びます。最後まで同じ呼び方で通します。
ここで先に、この記事のいちばん大事な一文を置きます。AIはこちらの状況を知りません。だから足りないのは言い方ではなく、渡していない前提のほうです。
人間の同僚なら共有できている前提が、AIには多くの場合渡っていません。やりとりを記憶しておく機能を使っていても、その案件の事情までは入っていないんです。
これは、新しく入ったメンバーへ仕事を頼む場面に置き換えると分かりやすいです。優秀な人が来ても、社内の事情・今回の目的・触ってはいけない部分を渡さなければ、出てくるものはずれます。そのときに必要なのは丁寧な言い回しではなく、共有されていない情報ですよね。AIとのやりとりも同じ構造をしています!
4つの材料を、抜けたときに何が起きるかとセットで並べます!
| 材料 | 中身 | 抜けると起きること | 足すときの1行の形 |
|---|---|---|---|
| ①目的 | 何のために・誰が読むか | 正しいけれど自分の用途に合わない答えが返る | 「◯◯へ渡す資料の下書きに使います」 |
| ②前提 | AIが知らないこちらの状況・手元の材料 | 一般論で埋められ、当たり障りのない内容になる | 「前提はこうです。(箇条書きで貼る)」 |
| ③制約 | 条件・避けたいこと・分量 | 使えない案が混ざり、選ぶ手間が残る | 「予算と人手は増やせません。3案までで」 |
| ④出力の形 | 形式・こまかさ・順番 | 形を直す作業が毎回発生する | 「表で、列は案・利点・懸念の3つで」 |
そのまま使える枠を置いておきます! コピーして、カッコの中を自分の仕事の言葉で埋めるだけです。
目的:(何のために・誰が読むか)
前提:(AIが知らないこちらの状況)
制約:(条件・避けたいこと・分量)
出力の形:(形式・こまかさ・順番)
表を縦に読むと分かるのは、抜けたときに起きることが「間違い」ではなく「ずれ」だということです。AIは何かしら返してくれるので、失敗として気づきにくい。だから「なんとなく使えないな」で終わって、言い回しを変える方向へ行ってしまうんです。行き先を材料のほうへ変えると、直す場所がはっきりします。
「うまい言い方がある」という感覚は、途中まで正しいです
プロンプトのテンプレ集は実際に効きます! ただし効いている理由は、言い回しではありません。 ここは正面から書きます。
よく出回っているテンプレを開くと、たいてい「あなたは◯◯です」「目的は」「条件は」「出力形式は」という穴埋めの枠になっています。つまりテンプレがやっているのは、上の4つの材料を強制的に思い出させることなんです。枠に沿って書くと材料が揃うので、結果が良くなる。ここまでは通説のとおりで、僕もテンプレは便利な道具として使っています。
ここから先が、この記事で足したい一歩です!枠は共通でも、中身は自分の仕事にしか無い。 テンプレ集をいくら集めても、自分の会社の事情・今回の読み手・使ってはいけない表現は、その中に書かれていません。だからテンプレを増やすほど手応えが薄くなる、という現象が起きます。
もうひとつ、よく聞く話にも答えておきます。「役割を与えると結果が変わるから、あれは言い回しの効果では」。これも途中まで正しいです。ただ、役割を与える一文が効いているのは、どんな読み手を想定して、どの水準で書くのかという前提を、1語で渡しているからだと僕は見ています。「新入社員に説明するつもりで」と書くのは、丁寧な言い方ではなく前提の指定なんです。つまりこれも材料の話として説明できます!
公式のガイドでも、材料側が大きく扱われています。Anthropicのプロンプトエンジニアリングの概要は、プロンプトを改善する前に「うまくいったと言える基準」と「それを試して確かめる方法」を先に用意しておくことを前提に置いています。うまくいったの定義が無いまま言い回しを変えても、良くなったかどうかを判定できないからです。OpenAIのプロンプトエンジニアリングのガイドも、指示・文脈・例・構造化した出力という材料側の項目を軸に組み立てられています。
同じ依頼が、材料を足すとどう変わるか
材料を足す作業は、頭の中にあって相手が知らないことを外へ出す作業です。 新しく思いつく必要はありません。例として、仕事でよくある依頼を1つ通してみます!
| 観点 | 材料なしの依頼 | 材料ありの依頼 |
|---|---|---|
| 渡した文 | 「議事録をまとめて」 | 「この議事録を、欠席した先輩1人へ共有する用に整理してください。決まったこと・宿題・次回までの期限の3つだけで、箇条書き10行以内。社外の固有名詞は伏せてください」 |
| 入っている材料 | ④出力の形の一部だけ | ①目的 ②前提 ③制約 ④出力の形 |
| 返ってくるもの | ひととおり全部を拾った要約。長さもこまかさも毎回変わる | そのまま送れるこまかさの3項目 |
| 自分に残る作業 | 削る・並べ替える・形を整える | 事実の確認と、送る前の一読 |
この表で見てほしいのは、右側が長いことではありません。左側で自分が後からやっていた作業(削る・並べ替える・形を整える)が、右側では先に言葉になっているだけです。作業の総量は変わらず、順番が入れ替わっています。しかも右側の内容は、次に同じ依頼をするときそのまま使い回せます。
ここは僕自身の仕事のやり方の土台とも重なります。僕はCoelia HPとobata-tomu.jpをAIを駆使してチームで設計・開発・運用していて、Claude Codeをフル活用したモバイルアプリ開発も実践しています。その中で効きやすいのは、うまい言い回しの発見ではなく、毎回渡す前提を文章として置いておくことです。仕事のモットーにしている「曖昧さを減らすことで、結果的に早く進む」は、AIとのやりとりでもそのまま働きます。
ただし、これは僕の環境での観察で、業種や扱う情報が違えば効き方は変わります。だからこの記事で確定させるのは「材料を書き出す」という手順のほうです! こちらは環境が変わっても持ち歩けます。どの書き方が最適かは、自分の仕事で試して決めてください。
今日の一歩は、どちらか1つでOKです。
- もうAIを使っている人:今日投げた依頼を1つ選んで、①〜④のうち書いていなかったものを1行ずつ足して投げ直す!
- まだ投げたことがない人:いま手元にある仕事を1つ選んで、①〜④を1行ずつ書いてから渡す。書く時点で頭が整理されるので、渡す前から得があります。
新しいツールも知識も、まず要りません! 差分が体感できると、次から自然に材料を書くようになります。
材料をそろえても解けないこと
万能ではないので、外れる場面を先に置きます。
- 自分の目的がまだ決まっていないとき:材料の①が空なので、書き出しても埋まりません。この場合はプロンプトの前に目的を決めるほうが速いです。決め方はAIを学んだのに実務で使えない理由にも書きました
- 画像や音声など、出力の性質が違うとき:描写の語彙や形式の比重が上がります。4つの材料は土台として効きます! そこへ領域ごとの書き方が乗ると考えてください
- 会社のルールを確認していないとき:機密情報・個人情報・顧客のデータを渡す前に、必ず自社のAI利用ルールを確認してください。ここは材料以前の話です
- 一発で完成させようとしているとき:材料を足しても1回で終わるとは限りません。返ってきたものを見て足りない材料を1つ追加する、という往復のほうが速いです。
逆に、この考え方がいちばん効くのは仕事でAIを使い始めたばかりで、返ってくるものが毎回ぶれる人です! ぶれの原因はたいてい材料の抜けなので、直す場所がすぐ見つかります。業務そのものをAI前提で組み替える段階まで進みたい人は生成AIで業務フローを作る方法、若手のうちに1業務を仕組みへ変えたい人は若手社員のAI業務改善を土台にしてもらえたらうれしいです。
よくある質問
プロンプトとプロンプトエンジニアリングは違うものですか?
プロンプトはAIへ渡す入力そのもの、プロンプトエンジニアリングはその入力を設計して改善していく取り組みを指します。資格の名前ではありません。目的を決めて、渡す材料を調整して、結果を見て直す一連の作業のことです。特別な準備がなくても今日から回せます。
プロンプトは長いほうがいいんですか?
長さが目的ではありません! 必要なのは目的・前提・制約・出力の形の4つが入っていることで、それが短く書けるならそのほうが良いです。関係のない説明を足しても結果は良くならないので、長くする方向ではなく、抜けている材料を足す方向で考えてください。
テンプレ集を使うのはよくないことですか?
まったく問題ありません。テンプレの枠は、4つの材料を思い出させてくれる便利な道具です! ただし枠が埋めてくれるのは形だけで、中身は自分の仕事にしか無いので、そこは自分で書く前提で使ってください。枠は借りて、中身を自分で埋める。これがいちばん強いです。
同じプロンプトなのに結果が変わるのはなぜですか?
AIの出力には毎回ゆらぎがあります。だからこそ、出力の形を指定しておくとぶれ幅が小さくなり、比べやすくなります!そのうえで大事なのは、良くなったかどうかを判定できる基準を自分で持っておくことです。公式ガイドが「先に成功の基準と確かめ方を用意する」と置いているのは、この判定のためです。
仕事の情報をAIに渡しても大丈夫ですか?
ここは会社のルールが先です。機密情報・個人情報・顧客のデータの扱いは、利用しているサービスの契約と自社の規程で決まります。判断がつかないときは、社内の情報システム担当や上長へ確認してください。確認を1回はさむだけで、あとで困る場面をまるごと防げます。